橋をとおして見たアメリカとイギリス


橋をとおして見たアメリカとイギリス
−長大橋物語−

古屋 信明  著

B6判 本文 220ページ
カラー口絵  定価:本体 1,900円+税
(平成10年3月発行)


あとがきから

1973年に学校を卒業して本州四国連絡橋公団に採用されて以来,25年間,海峡を渡る長大吊橋の設計・施工計画検討,ときには現場で実際の工事,あるいは本社や中間組織である局での間接的な仕事などに携わってきた.
本四連絡橋には,10の吊橋をはじめとして海を渡る長大橋がたくさんあるが,その中で私が今まで密度濃くかかわることのできた橋は,建設では大鳴門橋,(1985年完成,中央スパン876m)と明石海峡大橋(1998年,1,991m),管理では瀬戸大橋(1988年,最大橋は1,100m)である.さらにこの間,アメリカ留学(1年余)や国際協力事業団を経由したインドネシアへの派遣(2年間),あるいは国際会議出席などのための何回かの海外出張の機会も与えていただいた.これらの橋たちに重ね,また外国の街に,新しいことを勉強しながら思い出を作り,人生の旅(結婚・子供たちの誕生と成長・父親との別れ)もここまで歩いてきた.橋の勉強に関しては,より大きな橋・より技術的にむずかしい橋へと道は続き,逆行することがなかった.
 さて,本文中に紹介してきたとおり,長大橋の設計や建設ではアメリカやイギリスが先輩であり,私がその道を歩き始めたときには圧倒的な師ですらあった.したがって,そのころは欧米の橋を紹介した文献をよく読んだものである.そして,その技術面と同じぐらいに興味を持ったのが,長大橋を建設するに至った社会的背景や時代の心意気,とでも言うべきものである.
 科学の原理原則に国境はないが,何かを具体的な形に作り上げようとする場合には,その国々・時代時代の精神が色濃く反映されるものだ.つまり技術には国境がある,とそれ以来考えている.そのような「もわっとした」もの・いくつかの橋の歴史的雰囲気を,二次的資料に基づいて描写することしかできないが,前述の思い出も下絵にしながらいつか本にしてみたいものだ,と思い続けてきた.そして今回,橋の愛好者がアメリカやイギリスに出かけるときのガイドブックぐらいにはなるであろうと,建設図書さんにお願いして出版していただくことにした.
 しかし,この種の本は,原典に立ち返って学問的に考証し,論を積み重ねていくのとは違って,いわば書き散らしが可能だから,小著が世に問えるレベルであるのかと実は危惧している.この本は私個人には,1996年暮れの失意からのカタルシスでもある.
 表紙カバーのデザイン・章扉のカットは,本四公団の仲間のひとりでもある栗野純孝君にお願いした.彼の優れたセンスにより,この本の印象がずいぶん高められた.心からお礼を申し上げる.
なお,本書は月刊誌「舗装」Vol.25,No.5からVol.26,No.9までに掲載された「講座・舗装の維持修繕」を再編集し,収録したものである.

1998年3月明石海峡大橋の完成1か月前の,その神戸にて    古屋 信明


>詳 細 目 次

〔フロンティアの終焉を見た橋〕
  • アメリカにおけるフロンティアの意味 フロンティア学説,ワイオミングという場所
  • ララミー砦の橋:オールドアーミー橋
  • オールドアーミー橋が見たもの ララミー砦に橋が架けられたころ,オレゴントレイル,フロンティアの終焉とインディアンの悲しみ
〔霧と坂道の街の橋〕
  • サンフランシスコの街
  • スパニング・ザ・ゲート(入り口に橋を架けよう!)・ゴールデンゲート橋 橋を架けようという声,背の低い男の大きな夢,世界一の吊橋の工事,ゴールデンゲート橋を楽しむ
  • 湾を渡る:サンフランシスコ・オークランド・ベイ橋 湾横断の重要性,深く大きな基礎を造る,ベイ橋を渡って
〔移民の凱歌の橋〕
  • ニューヨークという街 ニューヨークとの初対面,思い出の蓄積,ニューヨークの地理的利点,発展の歴史,橋の需要とニューヨークに引き寄せられた才能
  • イーストリバーの世界8番目の不思議:ブルックリン橋 イーストリバーに橋を!,あるドイツ移民の実力,ナイアガラ吊橋の成功,ブルックリン橋の胎動,橋の工事と親子・夫婦の物語,ブルックリン橋を楽しむ
  • ハドソン河に架ける人類初のスパン1,000m:ジョージ・ワシントン橋 ハドソン河にも橋を!,スイスから来た若者,吊橋がたわむことの意味,スパン1,000mを超える,ジョージ・ワシントン橋のまわり
  • ニューヨーク港の新しい象徴:ヴェラザノ・ナローズ橋 スパニング・ザ・ナローズ(ザ・ナローズに橋を!),ヴェラザノ・ナローズ橋を見る
〔産業革命を語りつぐ橋〕
  • イギリスという国の一面 義務または本分,羊とピーター・ラビット
  • 石炭で鉄を作れるようになるまで 産業革命と鉄,鉄と人間のつきあいの歴史,良き女王ベス,セバーン河畔のコークス製鉄
  • 世界初の鉄橋:アイアン・ブリッジ コールブルックデールと橋,初めての鉄の橋,鉄の橋の評判,産業革命の生き証人を守る,アイアン・ブリッジを訪ねる
〔ロンドンから遠く離れて:錬鉄橋そして鋼橋への飛躍〕
  • ユニオン・ジャックの旗の下に 旗の構成,イングランドに対する思い
  • 北ウェールズ:メナイ海峡の橋とコンウェイの橋 イギリスの列車の下り方,メナイ海峡,19世紀を支えた材料・錬鉄,メナイ吊橋,鉄道の世紀,ブリタニア橋,コンウェイに架かる橋
  • ブルネルのブリストル:クリフトン吊橋 ブリストルの町,ブルネルと鉄の船,難産のクリフトン吊橋,ブルネルの死とクリフトン吊橋の完成,ブルネルとブリストル,ブリストルを訪ねる・セバーン橋も
  • 20世紀への扉を開く・フォース鉄道橋 スコットランドの地,テイ橋の悲劇,ファース・オブ・フォースへの挑戦,鋼の時代の扉を開く,鋼の勝利,フォース橋を訪ねる
〔光と陰・そして日本〕