橋と鋼


橋と鋼

大田孝二・深沢 誠  共著

B5判 496頁
定価:本体 6,500円+税
(平成12年2月28日発行)

  本書は雑誌『橋梁と基礎』に1995年〜1996年にかけて連載された「講座・鋼材」を大幅に加筆・修正して単行本にしたものです。
若いエンジニアを対象にしたものですが、経験豊富な技術者にとっても原点に立ち返って読んでいただければ、整理をする機会となるはずです。技術士(鋼およびコンクリート構造)の試験の参考書としても最適です。


発刊に寄せて

 「鋼」が,国を創り,国を守るインフラストラクチャーの整備には欠かせない材料であることはあまりに当たり前のことである.特に,我が国では良質の鋼材が供給され,また耐震性・施工性の理由から鋼が広く用いられてきた歴史がある.
 それほど重要な材料ではある鋼のことを我々は十分理解しているかと聞かれれば,残念ながら,ほとんどの人がはなはだ怪しいと答えざるを得ないであろう.インフラストラクチャーのもう一方の雄であるコンクリートは,自分で配合を設計し,自分で練って施工する.一方,鋼材は製鉄会社から素材として購入する.材料である「鋼」を我々が設計するということはない.ユーザーなのである.そのため,鋼の材料としての特性そのものを詳しく知る必要が少ないのは,ある意味で当然とも言えよう.しかし,材料あっての構造物なのであり,材料の特性は構造物の一生の中でいろいろな形で現れてくるのである.
 鋼構造とか橋梁工学はどこの大学でも教えている.成書の数も非常に多い.しかし,鋼部材の力学や構造解析的なところが強調されすぎており,鋼材のこと,鋼構造物のことががあまり触れられていない.材料のことを記した本もないわけではないが,逆に構造物との関連がわかりにくい.勿論,冶金や金属の本はあるが,ユーザーである我々土木屋にはとっつき難く,よほど必要がなければ,そのような本を紐解く余裕はない.要するに,「鋼」構造物を原点に材料のこと,それに関連する周辺技術を我々向きに書いた本はなかったのである.
 確かに,研ぎ澄まされた数式理論は時に有用である.しかし,新しい発想は往々にして,周辺の小さな知識,悪く言えば雑学の組み合わせから生まれることが多い.鋼構造物にまつわる広汎な雑学を与えてくれるこの本を読んでいると,新しい展開や発想が生まれる素地を与えてくれるような気がする.
 本書は土木,特に橋の設計・施工・保守に従事している人に向けた,鋼橋と鋼材の本であり,これまでにはなかった類の本と言えよう.二人の著者は橋を中心とした鋼構造物に長らく携わってきたエンジニアであり,まさしく我々の知識の浅さを見抜いたうえで,我々のために書かれた本ということができる

東京大学大学院 工学系研究科 社会基盤工学専攻 教授 Ph.D.
 藤野 陽三


詳細目次

1章 鋼って何だろう
1.1 鋼をつくる
1.2 圧延鋼材の種類
1.3 鉄と鋼と鋳鉄
1.4 鋼の特性
1.5 製鋼の歴史
1.6 橋梁と鋼
2章 鋼材の種類
2.1 橋梁に使用される鋼材の種類
2.2 構造用圧延鋼材
2.3 鋼材に関係する試験方法
2.4 70キロ鋼,80キロ鋼
2.5 道路橋示方書での鋼種選定標準
2.6 厚板の許容応力
2.7 電炉材
2.8 PC鋼材
2.9 ケーブル
2.10 高力ボルト
2.11 鋼管
2.12 鋳鉄,鋳鋼
3章 強い鋼
3.1 鋼材はどこまで強くなるのか
3.2 橋梁鋼材の高度強化の流れ
3.3 どのように強度を高めるか
3.4 高張力鋼の特徴
3.5 本四連絡橋への適用
3.6 一般橋梁への適用の可能性
4章 錆びない鋼
4.1 耐候性鋼材
4.2 ステンレス鋼
4.3 クラッド鋼
4.4 アルミニウム
4.5 溶融亜鉛めっき
4.6 吊橋ケーブルの防錆
5章 機能鋼材
5.1 TMCP鋼
5.2 大入熱溶接用鋼
5.3 クラックフリー鋼
5.4 耐ラメラテア鋼
5.5 テーパー付き(LP)鋼板
5.6 波形(コルゲート)鋼板
5.7 制振鋼板
5.8 非磁性鋼
5.9 建築分野での機能鋼材
6章 鋼構造物の破壊
6.1 橋梁の事故
6.2 座屈
6.3 鋼材の降伏,塑性
6.4 鋼材の延性と脆性
6.5 脆性破壊と破壊力学
6.6 疲労破壊
6.7 損傷部の補修補強
7章 鋼を加工する
7.1 部材寸法の制限
7.2 材料手配
7.3 原寸
7.4 罫線
7.5 切断
7.6 切削
7.7 孔明け
7.8 曲げ加工
8章 鋼をつなぐ
8.1 溶接の特徴
8.2 橋と溶接
8.3 溶接方法
8.4 溶接方法,溶接材料の選択
8.5 溶接継手の種類
8.6 溶接継手の設計
8.7 溶接継手の設計上の留意点
8.8 溶接部の性質
8.9 溶接施工上の留意点
8.10 溶接の自動化
8.11 現場溶接
8.12 溶接部の残留応力
8.13 溶接変形
8.14 ひずみ矯正
9章 鋼の内部を探る
9.1 非破壊試験
9.2 橋梁部材の溶接継手の検査
9.3 母材の欠陥と非破壊検査
9.4 溶接欠陥と非破壊検査
9.5 維持管理と非破壊検査
9.6 今後の非破壊検査
10章 これからの橋と鋼
10.1 これからの鋼材
10.2 これからの橋梁
付録 橋梁の歴史